日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)東京医科歯科大学 頭頸部外科,2)東京医科歯科大学 消化管外科,3)順天堂大学 食道・胃外科,4)兵庫県立がんセンター 頭頸部外科,5)熊本大学 消化器外科,6)近畿大学 上部消化管外科,7)NTT東日本関東病院 外科,8)昭和大学 耳鼻咽喉科,9)名古屋大学 耳鼻咽喉科,10)宮崎大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科66鏡治療群が73.13%,86.62%,手術治療群が47.92%,53.12%,IC群が55.02%,65.12%,CRT群が40.39%,52.17%であった。Cox比例ハザードモデルによる解析の結果,OSでは反回神経麻痺,Stage III以上が有意な予後因子となり,DSSではStage III以上のみが有意な予後因子であった。治療法による生存率の差は認めなかった。また,初診時に喉頭温存手術の適応がないと診断された96症例のうち,92症例にICまたはCRTが施行され,55症例(57.3%)の症例で喉頭の温存が可能であった。最終診察時に胃瘻または腸瘻を造設していた割合は内視鏡治療群では6.1%,手術治療群では9.8%,IC群では13.4%,CRT群では17.5%であったが,有意差は認めなかった。5.結論 頸部食道癌治療ではICやCRTを行うことで生存率を下げることなく喉頭温存が期待できる。しかしながら喉頭温存できた症例においても胃瘻が必要な症例もあり,生存率とQOLを両立する最適な治療法については更なる検討が必要である。日気食会報,73(2),20221.背景 頸部食道癌はその希少性から標準治療が定まっておらず多様な治療が行われているが,その実態は明らかでない。2.目的 多施設共同研究を通じて日本における頸部食道癌治療の現状を明らかにする。3.方法 日本気管食道科学会認定専門医研修施設のうち,21施設において2009年12月から2016年12月にかけて治療を行った頸部食道癌症例302症例を対象とし,治療法の内訳,生存率,喉頭温存率,胃瘻造設率について後方視的検討を行った。4.結果 初回治療の内訳は,内視鏡治療が33症例,手術治療が41症例,導入化学療法(IC)後の手術,または化学放射線治療が67症例,化学放射線治療(CRT)が143症例,その他の治療・または不明が18症例であった。各群における5年全生存率(OS),疾患特異的生存率(DSS)はそれぞれ内視大野十央1),川田研郎2),峯 真司3),松居秀敏4),馬場祥史5),安田卓司6),佐久間淳7),池田賢一郎8),丸尾貴志9),奥田 匠10),朝蔭孝宏1)頸部食道癌治療に関する全国調査学会臨床研究発表会

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