日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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内視鏡検査や生検においてはfull-PPEが標準となった。臨床の多くの場面で感染対策には習熟してきたともいえる。 第5波では複数の変異株の出現により,未だ混乱は続くが1年半の経験を糧に安全な対応を目指したい。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。文  献容されたこともあり,後半の時期には早期に施行する傾向がみられた。また,耳鼻咽喉科医,麻酔科医,看護師もふくめ感染者はでなかった。 演者が初めてCovid-19感染患者に対して気管切開したときには,緊張感と焦燥感から大きなストレスを感じたこともあり,愛知医科大学では2020年4月から,明らかな非感染者に対する待機的気管切開であっても,日本耳鼻咽喉科学会気管切開対応ガイドによる手順を標準術式として定め,麻酔科・手術室にも理解を得て,実行してきたことで手順への理解が深まったことが陽性例への気管切開術を安全に行えた基礎となったと考えている。4.標準防護策徹底の副産物 COVID-19の感染対策に附随して,別次元の問題であるが変わったことがある。時にルーズであった一般診療における標準防護策が耳鼻咽喉科外来や病棟において一気に徹底された。病棟と外来における手指消毒用アルコール使用量は2020年4月以降,1.5〜2倍に増加し,入院患者に対するMRSA伝搬が起こる確率であるMRSA保菌圧(保菌者延べ入院日数/入院患者延べ日数×100)が減少した。 N95マスクやガウン等が充足し,PCRによる感染の有無がわかるようになって,徐々に診療姿勢は改善してきた。外来における日常臨床においても,日気食会報,73(2),20221) 日本耳鼻咽喉科学会:「気管切開」の対応ガイド2020年6月16日改定 第二版.http://www.jibi ka.or.jp/members/information/info_corona_ 0617_06.pdf(2021/10/31アクセス).2) Kimura Y, Ueha R, Furukawa T, et al:Society of swallowing and dysphagia of Japan:Position statement on dysphagia management during the COVID-19 outbreak. Auris Nasus Larynx 47(5):715─726, 2020.3) Hiramatsu M, Nishio N, Ozaki M, et al:Anesthet-ic and surgical management of tracheostomy in a patient with COVID-19. Auris Nasus Larynx 47(3):472─476, 2020.4) Yokokawa T, Ariizumi Y, Hiramatsu M, et al:Management of tracheostomy in COVID-19 pa-tients;The Japanese experience. Auris Nasus Larynx 48(3):525─529, 2021.76

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