日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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77浮き彫りになった。さらには遺伝子パネル検査についても言及があり,再発・転移頭頸部癌に対する今後の展望も述べられた講演であった。 講演3「切除可能非小細胞肺癌に対する周術期ICI治療の現状と展望」坪井正博(国立がん研究センター東病院呼吸器外科) 周術期治療における内外の臨床研究に関する詳細な解説がなされた。術前治療のCheckMate816試験では病理学的奏効および無再発生存期間に関して有効性が示され,術後治療のIMpower010試験においてPD-L1陽性のII期〜IIIA期肺癌において再発リスクを低下させることが示された。今後周術期の標準治療が大きく変化するであろうことが示され大変興味深い報告であった。 講演4「肺癌治療における免疫チェックポイント阻害薬の進歩」竹之山光広(松山赤十字病院呼吸器センター) ICI開発の歴史と展望について自施設の経験を踏まえた報告がなされた。進行肺癌に対する2次治療以降の使用に始まり,単剤による1次治療,そして殺細胞性薬物療法との併用療法と開発が進んでいる。またICIとの併用も使用可能である。IMpow-er150試験結果での肝転移への有効性やICI併用療法での脳転移への効果など,レジメンによって特徴的な効果が期待される一方で,いずれも長期生存が期待されることが示された。進行癌といえども長期的効果が得られる可能性があることを念頭においたフォローが必要であるという重要な指摘があり,臨床的に大変有意義な報告であった。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。日気食会報,73(2),2022pp.77─88J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022シンポジウム2本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。はじめに 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は,気管食道科領域である肺癌や頭頸部癌で早期に保険適用となり,その実臨床での成果が集積されてきている。加えて複合療法や周術期治療など,応用が拡大している。本シンポジウムでは4人のシンポジストが,頭頸部癌と肺癌領域におけるICI治療の最前線について講演した。 講演1「実臨床におけるペムブロリズマブを用いた再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法」安松隆治(九州大学耳鼻咽喉科) 再発または遠隔転移を有する頭頸部癌に対し,実臨床において行われた,CPSに基づいたペンブロリズマブ単独療法や抗癌剤との併用療法の治療成績が報告された。CPS高値症例では臨床試験よりもOSが良好であること,二次治療のタキサン+セツキシマブ療法の奏効率が高いこと,適切なirAE制御の重要性などが示され,再発・転移頭頸部癌症例に対し,ICI治療によって長期生存を得るための重要な指針が示された講演であった。 講演2「頭頸部癌における免疫チェックポイント阻害薬と臨床での使用,および今後の展望」山﨑知子(埼玉医大国際医療センター頭頸部腫瘍科) プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部癌に対する,実臨床でのニボルマブ療法の治療成績が示された。臨床試験に比べ実臨床では,75歳以上の高齢者やPS2症例の率が高く,PS2症例の成績が不良であること,irAE対策で用いられるステロイドの長期使用の問題点などが示され,ICI治療の実践的課題がシンポジウム2「Immuno-Oncology 時代のがん治療」 司会者のまとめImmuno-Oncology時代のがん治療倉富勇一郎 佐賀大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座鈴木 弘行 福島県立医科大学附属病院 呼吸器外科

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