団とITT集団において,対照群と比較して統計学的な優越性が認められた。一方ペムブロリズマブ単独群では,CPS≧1およびCPS≧20のPD-L1陽性集団で対照群と比較して優越性が認められた。3.有効性に基づいたCPS別の推奨レジメン 前述の臨床試験結果を基にして,頭頸部癌学会ガイドライン委員会からCPS別の推奨レジメンに関するコメントが発表されている4)(以下,一部抜粋参照)。● CPS≧20ではペムブロリズマブ単独療法はプラチナ製剤+5-FU+セツキシマブ療法と比較してOSで明らかな優越性を示しており,安全性とのバランスからも勧められる。ただし,すみやかに腫瘍を縮小させたい場合(腫瘍による症状がある,これ以上腫瘍が増大すると致命的な症状の発生が懸念される,など)には,高い奏効割合(43%)を示すプラチナ製剤+5-FU+ペムブロリズマブ療法は良い治療選択肢である。78● 1≦CPS<20ではプラチナ製剤+5-FU+ペムブロリズマブ療法はプラチナ製剤+5-FU+セツキシマブ療法と比較してOSは良好で(ハザード比0.71),PFSでも同等な成績を示しており(ハザード比0.93),安全性とのバランスからも勧められる。一方,ペムブロリズマブ単独療法はプラチナ製剤+5-FU+セツキシマブ療法と比較してOSで優れる傾向にあったが(ハザード比0.86),PFSではやや劣る傾向で(ハザード比1.25),奏効率(ORR)は15%に留まっており,腫瘍量が少なく病勢進行が比較的緩徐な場合などで治療選択肢になり得る。● CPS<1の場合にはペムブロリズマブ単独療法は勧められず,通院頻度や有害事象プロファイルなどを考慮してプラチナ製剤+5-FU+ペムブロリズマブ療法を選択してもよいが,プラチナ製剤+日気食会報,73(2),2022J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022シンポジウム2本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1.はじめに 分子標的薬であるセツキシマブが再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法として2012年に保険適用となり,EXTREMEレジメン(プラチナ製剤+5-FU+セツキシマブ)が新たな治療選択肢として加わった1)。その後2017年には免疫チェックポイント阻害薬(ICI)であるニボルマブがプラチナ抵抗性(プラチナ製剤を含む治療から6カ月以内の再発例)の再発または遠隔転移を有する頭頸部癌患者を対象としたCheckMate141試験の成績に基づき保険適用となり2),さらに2019年には,同じくICIのペムブロリズマブが実臨床で使用可能となった。本稿では自施設で行った実臨床下でのペムブロリズマブを用いた再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法の結果を中心に報告する。2.KEYNOTE-048試験 ペムブロリズマブの保険適用の基となったKEY-NOTE-048試験3)は,再発または遠隔転移を有する頭頸部■平上皮癌で,化学療法歴のない症例,あるいは局所進行癌への全身治療後6カ月以降の再発症例(プラチナ感受性症例)を対象として実施されている。対象症例は,ペムブロリズマブ単独群,ペムブロリズマブ併用群(ペムブロリズマブ+5-FU+プラチナ製剤),および対照群(EXTREME:プラチナ製剤+5-FU+セツキシマブ)に割り付けされた。全生存期間(OS),無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目とし,解析は全体集団(ITT集団)と,PD-L1発現状況(CPS:PD-L1を発現した腫瘍細胞,リンパ球,マクロファージを総腫瘍細胞数で除し100を乗じた数)別にCPS≧20の集団,CPS≧1の集団で評価された。その結果,ペムブロリズマブ併用群はCPS≧1,CPS≧20のPD-L1陽性集実臨床におけるペムブロリズマブを用いた再発・転移頭頸部癌に対する薬物療法Immuno-Oncology時代のがん治療安松隆治1)1)九州大学医学研究院 耳鼻咽喉科学分野
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