日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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1)国立がん研究センター東病院 呼吸器外科83実施された多施設無作為化オープンラベル第III相試験である。UICC第7版のIB期(腫瘍径4 cm以上)からIIIA期のNSCLC完全切除症例に対して,プラチナ製剤併用療法施行後にアテゾリズマブを投与する群としない群を比較検証しており,欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2021,世界肺癌学会(WCLC)2021で最新の中間解析が報告された9)。II〜IIIA期のPD-L1≧1%の集団ではアテゾリズマブ群でHR 0.66(95%CI:0.50─0.88,p=0.0039),II〜IIIA期の全患者ではHR 0.79(95%CI:0.64─0.96,p=0.020)と有意な無病生存期間(DFS)の延長を認めた。特にPD-L1≧50%の集団ではHR 0.43(95%CI:0.27─0.68)と最大のDFS改善効果が示された。また再発部位については両群間で明確な違いは見られなかったが,再発までの期間はアテゾリズマブ群で有意に延長しており,安全性についてもアテゾリズマブに関する従来の報告と変わりはなかった。4.ICI術前/周術期補助療法 切除可能なNSCLCに対する周術期ICI療法は術後補助療法だけでなく術前/周術期補助療法としても検討されている。第II相試験 NEOSTAR試験は,切除可能なI〜IIIA期のNSCLCを対象とし,術前ニボルマブ単独群と術前ニボルマブ+イピリムマブ併用群を比較検証したものである10)。ニボルマブ単独群で22%の主要病理学的奏効(MPR),併用群では38%のMPRが得られた。この結果は術前化学療法の既存対照群と比較して設定した有効性の基準値を併用群において満たすものであった。NADIM試験は,切除可能なIIIA期NSCLCを対象とし,術前カルボプラチン+パクリタキセル+ニボルマブ併用療法,術後ニボルマブ療法の有効性を単群で検証したものである11)。この試験では24カ月無増悪生存率(PFS)が77.1日気食会報,73(2),2022J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022シンポジウム2本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1.はじめに 肺癌は世界中で主要な死因の一つであり,その根治治療として手術が重要な役割を果たしている。しかし手術適応である病理病期IB/IIA/IIB/IIIA期の5年全生存割合は,それぞれ73%/65%/56%/41%と決して満足できるものではなく1),治療成績向上のためには遠隔転移の制御が第一の課題であり周術期の全身治療の開発,改善も重要である。2.従来の術後補助療法 2005年にHamadaらにより術後テガフール・ウラシル配合剤(UFT)療法に関するメタアナリシスが報告された2)。この報告で病理病期I〜III期の非小細胞肺癌(NSCLC)において5%の5年生存割合の改善を認め,術後UFT療法の有効性が確認された。2008年にはPignonらにより術後シスプラチン(CDDP)併用療法に関するメタアナリシスが報告された3)。この報告でも病理病期I〜III期のNSCLCにおいて5%の5年生存割合の改善を認めた。さらにCDDP+ビノレルビン(VNR)に限ったサブグループ解析も行われ,II期で11%,III期で15%の生存率改善効果を認めた4)。これらの報告をエビデンスとして10年以上もの間NSCLCに対して術後補助化学療法が行われてきた。3. 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)術後補助療法 一方,進行・再発肺癌の化学療法において2000年代までは殺細胞性抗癌剤が主流であったが,2010年代に入りICIの有効性が次々と報告され5〜8),瞬く間に広く使用されるようになった。この流れを受けてNSCLCの周術期化学療法においてもICIの有効性を検証する臨床試験が複数進行中である(表1)。 IMpower010試験は22の国と地域の227施設で小野寺賢1),坪井正博1)切除可能非小細胞肺癌に対する周術期ICI治療の現状と展望Immuno-Oncology時代のがん治療

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