%,MPRが77.4%,病理学的完全奏効(pCR)が57%と良好な結果であった。またWCLC2020ではLCMC3試験の結果が報告され,切除可能なIB〜IIIB期のNSCLCに術前にアテゾリズマブを投与することでMPRが21%,pCRが7%であった12)。切除可能なIB〜IIIA期のNSCLCにアテゾリズマブ+カルボプラチン+ナブパクリタキセルの術前補助化学療法を行った第II相試験では,MPRが57%,pCRが33%であった13)。これらの試験の結果からICI単剤より化学療法との併用の方が効果が高い可能性も示唆されている。このように第II相試験ではあるがNSCLCに対するICI術前/周術期療法の有効性も示唆されている。第III相試験 進行中のICI術前/周術期療法の第III相試験の先陣を切ってCheckMate 816試験の結果が報告されている。本試験は15の国と地域の137施設で実施された多施設無作為化オープンラベル第III相試験である。AJCC第7版のIB期(腫瘍径4 cm以上)からIIIA期のNSCLC完全切除症例に対して,術前補助化学療法としてニボルマブ+イピリムマブ併用群,プラチナダブレット+ニボルマブ併用群とプラチナダブレットのみの群を比較検証するデザインで開始されたが,ニボルマブ+イピリムマブ併用群の効果がプラチナダブレット+ニボルマブ併用のそれを上回る可能性が低く,毒性も相応にあることから最終的にプラチナダブレット+ニボルマブ併用群とプラチナダブレットのみの群の比較試験として実施された。米国癌学会(AACR)2021,米国臨床腫瘍学会(ASCO)2021で,この試験の中間解析として主要評価項目の一つであるpCRの結果が報告された14)。化学療法のみの群と比較して全集団で併用群においてpCRを有意に増加させた(24.0%vs 2.2%,オッズ比13.94,95%CI:3.49─55.75,p<0.0001)。また最終的に手術は併用群の83.2%,化学療法群の75.4%で行われ,ニボルマブの追加による手術遂行率の低下は認めなかった。またこの試験のもう一つの主要評価項目であるEFS:Event Free Survivalでも併用治療が化学療法単独に比較して有意に延長したことが2021年11月8日にプレスリリースされており,学会での報告が待たれる。5. ドライバー遺伝子変異陽性肺癌に対するICI補助療法 進行非小細胞肺癌の一次治療において,ICIの有85効性を評価したほとんどの第III相試験ではEGFR遺伝子変異陽性,ALK融合遺伝子陽性の患者は主要評価項目の対象集団から除外されていた。二次治療においてICIとドセタキセルを比較した試験の統合解析ではEGFR遺伝子変異陽性例におけるICIのOSはHR 1.11(95%CI:0.80─1.53,p=0.54)であり,有効性は示されていない15)。基礎研究でもEGFR遺伝子陽性肺癌では特徴的な免疫抑制の腫瘍環境が構築されていることが報告されており16),EGFR遺伝子変異陽性肺癌ではICIが有効でない可能性が高い。一方EGFR遺伝子変異陽性肺癌においては術後オシメルチニブ療法の有効性が報告されている17)。したがってドライバー遺伝子変異陽性肺癌に対しては周術期補助療法においてもICIとは異なるアプローチが必要となるかもしれない。6.おわりに NSCLCの周術期治療は歴史的には主に術後に行われてきており,ICIの周術期治療も術後補助療法として開発が開始された。しかしICIの高い治療効果により術前治療としての効果も期待され,術前補助療法および術前術後補助療法としての治療開発も進められることとなった。今後は単剤投与か化学療法との併用か,併用する場合の薬剤の組み合わせ,投与のタイミングや適切な治療期間などを探索していくことが必要である。また副作用やコストの面からも治療が有効な集団を予測,選択していくことも必要であり,最適なストラテジーを構築していくことが求められる。現在薬剤の開発が急激なスピードで行われており,pCRやEFS,DFSをサロゲートエンドポイントとして評価が行われている。しかしpCR,EFS,DFSがこの集団における真のサロゲートなのかは明らかではなく,今後の課題と言えるだろう。 また周術期ICIに関する臨床試験ではこれらを踏まえて新しい試みも進行中である。MERMAID-1,2試験は,微小残存病変(MRD)の有無を再発リスクのマーカーまたは早期再発検知のマーカーとしてICIの効果を検証する無作為化第III相試験であり,周術期ICIの適応選択,再発高リスク症例抽出の新しい「流れ」として期待されている18, 19)。 このようにNSCLCに対する周術期ICI治療に関するさまざまな臨床試験が進行中であり,近い将来標準治療が大きく変わる可能性が高い。 COI開示:詳細はオンライン版を参照して下さい。日気食会報,73(2),2022
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