図2 自作spatula:先端は5 mm程度屈曲しており,臓器展開が容易で手元の干渉を軽減することができる.このため,当科では,カメラを5 mmとし,対面式に変更して,彎曲や先端屈曲型の長い鉗子を用いたところ,かなり干渉は減り,手術ストレスは軽減している。当科ではstaplerで血管処理を行うことにこだわらず結紮切離で処理を行い,選択式リンパ節郭清を行うことが多い。このため,創の位置は中腋窩線上で,上葉・中葉切除は第4肋間,下葉は第5肋間に3.5 cm創をおいており,手術操作に特段の不自由さを感じていない。血管処理のためのsta-plerの取り回しを良くするため,処理すべき血管から離れた位置に創をおく場合の欠点としては,縦隔リンパ節郭清の際,若干遠い視野となり,対面式では視野がとりにくく感じるため,見上げ式の併用が必要となることがある。また,肺血管から出血した場合の対処にも難渋することがあると考えられる。 energy deviceに関しては,超音波凝固切開装置派とvessel sealing system派に分かれると考えられるが,いずれも片手操作で,肺門においても縦隔においても残すべき組織と郭清すべき組織の間を剥離することは可能である。しかし,周囲臓器を展開して,リンパ節や周囲組織を把持,牽引しながら,残すべき構造物から郭清した方がより安全で確実な郭清が行えることは間違いない。この操作を行うためには,彎曲または屈曲した鉗子を効果的に用いることが重要である。超音波凝固切開装置とvessel sealing systemでは,剥離の面では超音波凝固切開装置の方が有利と考えられるが,cavitationなど安全性の面ではvessel sealing systemの方が勝る。 縦隔リンパ節郭清においては,従来の開胸や多孔式VATSで培われてきた安全性と根治性を考慮した手技を適用することは可能と考えるが,術野展開の工夫が必要である。従来の方法と同様に,上縦隔日気食会報,73(2),2022図3 右上縦隔郭清:自作spatulaを用いて奇静脈弓や上大静脈を圧排,展開する.104郭清では,上大静脈,奇静脈弓,肺動脈を圧排し展開することが,下縦隔郭清では心膜・食道の圧排と気管分岐部を牽引し展開することが郭清操作を行いやすくするポイントである。神経や血管からの郭清組織の剥離には,テーピングを行い術野展開に利用する。多くの施設では彎曲鉗子やコットンなどを用いるが,当科では自作のspatulaを用いて術野展開を行っている。spatulaの素材は真鍮ベースで比較的柔らかく,先端は5 mm程度屈曲しており,臓器展開が容易で手元の干渉を軽減することができる(図2)。上縦隔郭清では奇静脈弓や上大静脈を展開することに用いる。spatulaの上に載せるようにしてenergy deviceを挿入すると郭清の目的部位に到達しやすい(図3)。また,下縦隔郭清,特に気管分岐下リンパ節の郭清では,Wangらの方法4)のよ
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