日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション1反回神経麻痺の予防と治療本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。 反回神経麻痺は,気管食道科領域において複数の診療科で関わることの多い疾患である。その原因としては,頸胸部の悪性腫瘍や胸部の大動脈瘤,経喉頭的気管内挿管などに加え,外科手術の合併症として避けがたい症例もある。嗄声に代表される症状は患者QOLに直結するだけに,その適切な防止措置と発生後の診断・治療的介入が重要であることは論を俟たない。本セッションでは,5名の先生方に,その予防あるいは治療に関するご講演をいただいた。 それぞれの演者のご講演内容は,1)佐伯先生:食道癌に対する腹臥位胸腔鏡下手術(VATS-P)における反回神経麻痺に関する,従来の術式と比較しての臨床統計に加え,合併症を防ぐための術中操作について,動画を交えた解説。2)鈴木先生:縦隔鏡下食道切除術に際しての,術中持続神経モニタリングシステム(CIONM)の意義に関する自験例に117基づいた解説。3)黒瀬先生:甲状腺手術における術中持続神経モニタリングの有用性と,術中に神経切断を余儀なくされた場合の神経再建術の実際について。4)松崎先生:反回神経麻痺の診断・治療について,豊富な自験例に関する臨床統計を交えた総合的な概説。5)長谷川先生:反回神経麻痺に対する,低侵襲で発症後の早期介入にも有用な音声治療の効果について,実際の音声治療の様子を交えた解説,であった。いずれの先生のご講演も,それぞれ豊富な知識とご経験に基づいた現実的な内容であり,実臨床にも活かせる内容を豊富に含んでいる印象で,司会としても勉強になるセッションであった。 このような有意義な企画を計画いただいた杉尾会長に,深謝いたします。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。日気食会報,73(2),2022pp.117─127パネルディスカッション1「反回神経麻痺の予防と治療」司会者のまとめ古川 欣也 東京医科大学■城医療センター 呼吸器外科齋藤康一郎 杏林大学医学部 耳鼻咽喉科学教室

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