日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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が少ない,手術時間が長い,出血量が多いことが課題としてあげられている。また,従来の開胸手術,胸腔鏡手術と同様に,縦隔鏡手術においても術後反回神経麻痺は依然として克服すべき重大な合併症の一つである2)。 2020年4月より食道悪性腫瘍手術におけるCIONMの使用が保険適用された。術中神経モニタリングは,迷走神経にAPS電極を装着し,持続的に電気刺激を行って振幅値,潜時値を評価することで,術中に反回神経が損傷されると,迷走神経に伝達されアラートが発信されるシステムである。同システムは神経の同定,術中神経損傷の予防に有用とされている3, 4)。当科においても術中神経モニタリングにより,脂肪組織が多い症例やNACによる組織の硬化や瘢痕化などで反回神経の同定に難渋する症例であっても,確実に反回神経を同定することが可能となり手術時間が短縮された。さらに反回神経へのダメージがリアルタイムでわかり,術野外での鉗子による反回神経圧排においても警告があるため,より神経損傷に注意した手術操作が可能であった。 縦隔鏡下食道切除術の適応を拡大することにより,進行癌症例や3領域郭清を要する症例が増加するため,反回神経麻痺を含めた合併症の増加が懸念された。しかしCIONMを併用することで合併症が増加することなく本術式の適応拡大が可能であっ日気食会報,73(2),20221) Dionigi G, Barczynski M, Chiang FY, et al:Why monitor the recurrent laryngeal nerve in thyroid surgery? J Endocrinol Invest 33:819─822, 2010.2) Ozawa S, Koyanagi K, Ninomiya Y, et al:Postop-erative complications after minimally invasive esophagectomy for esophageal cancer. Ann Gas-troenterol Surg 4:126─134, 2020.3) Yang S, Zhou L, Lu Z, et al:Systematic review with meta-analysis of intraoperative neuromoni-toring during thyroidectomy. Int J Surg 39:104─113, 2017.4) Tsang RK, Simon L:Adaptation of continuous in-traoperative vagus nerve stimulation for monitor-ing of recurrent laryngeal nerve during minimally invasive esophagectomy. World J Surg 40:137─141, 2016.122た。一方,依然として反回神経麻痺が発生しており,CIONM併用下に,より愛護的な神経へのnon touch手技の確立が必要と思われた。6.結語 食道癌に対する縦隔鏡下食道切除術においてCIONMの併用は有用である可能性が示唆された。 一方,反回神経麻痺は依然課題であり,更なる工夫が必要と考えられた。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。文  献

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