日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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男女 ─4041─5051─6061─7071─J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション1反回神経麻痺の予防と治療性別年齢原因疾患本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1)国際医療福祉大学東京ボイスセンター,2)声のクリニック赤坂 こまざわ耳鼻咽喉科,3)声とめまいのクリニック 二子玉川耳鼻咽喉科甲状腺疾患特発性胸部大動脈瘤その他表1 患者背景No.91537554平均55.097351261),Vocal function exercise(VFE)などを言語聴覚士が組み合わせて行った。音声評価はVoice handicap index(VHI),最長発声持続時間(MPT:Maximum phonation time),平均呼気流率(MFR:Mean flow rate)で行った。3.結果 音声治療前後でVHIは平均で56.0(±23.17 SD)から11.7(±11.7 SD),MPTは平均で10.2 sec(±5.8 sec SD)から19.1 sec(±10.2 sec SD),MFRは平均で333.5 ml/sec(±329.0 ml/sec SD)から181.3 ml/sec(±72.2 ml/sec SD)と有意に改善した(p<0.05)(図2)。4.考察 一側性反回神経麻痺によりQOLが低下するほど気息性嗄声や誤嚥が増悪する場合,種々の注入術や甲状軟骨形成術I型(図3)および披裂軟骨内転術等の外科的治療によって声門閉鎖の改善を図ることが多い。しかし,声帯の内外転運動は反回神経麻痺発症直後より障害されるが,声帯の弓状弛緩は6カ月程度の時間をかけて緩徐に進行するため,早期に図1 プッシング法およびチューブ発声法日気食会報,73(2),20221.はじめに 本邦において一側性反回神経麻痺に対する音声治療の症例報告は散見されるが,音声検査データを集約的に検討した報告は少ない。今回,当院における一側性反回神経麻痺症例に対する音声治療の効果を検討した。2.対象と方法 研究デザインはRetrospective chart reviewで行った。2018年1月から2020年12月までに当院を受診し,一側性反回神経麻痺の診断で外科的治療なしに音声治療を施行した24症例(男性9例,女性15例)の診療録を後方視的に調査した。平均年齢は55.0歳であり平均音声治療期間は146.5日で中央値は126日であった。原因疾患は,甲状腺疾患術後9例,特発性7例,胸部大動脈疾患術後3例,その他5例であった(表1)。音声治療はプッシング法および硬起声法(図1),チューブ発声法(図長谷川智宏1),駒澤大吾2),許斐氏元3),渡邊雄介1)反回神経麻痺による音声障害に対する音声治療の効果

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