図3 甲状軟骨形成術I型究では,一側性反回神経麻痺24症例において音声治療により音声改善が認められたが,今後症例数を増やし,音声治療群と無治療群の比較や,音声治療開始時期による治療効果の比較,年齢や訓練法のサブグループ解析なども行い,外科的治療も含めた一側性反回神経麻痺に対する治療ストラテジーを確立したい。5.制限 重症一側性反回神経麻痺患者においては患者の強い要望で発症後6カ月以内に外科的治療を行った症例は除いてあるため,統計学的に検討した症例は比較的軽症例が多かった可能性もある。そのため,重症一側性反回神経麻痺患者への音声訓練効果は不明である。6.結論 軽症反回神経麻痺に対し音声訓練を行えば音声改善を期待できる可能性がある。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。文 献外科的治療を行っても術後に声帯萎縮が進行し再度何らかの手術を施行しなければならなくなる。また,6カ月程度は自然回復の可能性もあるとされている。したがって,一般には患者の強い手術希望がなければ,反回神経麻痺発症後少なくとも6カ月間は永久的な手術の施行を見合わせることが推奨されている1)。そのため,われわれは一側性反回神経麻痺患者に対して6カ月間,言語聴覚士による音声治療を行っている。今回の症例は,外科的治療待期期間に行った音声治療によって音声がある程度改善し,外科的加療の必要がなくなった症例と言える。 一側性声帯麻痺に対する音声治療の効果についてBusto-Crespoらは,有用であると報告している2)。またMattoliらは麻痺出現後4週以内,4〜8週の間,および8週以降に音声治療を開始した3群において,音声治療後の声帯運動の改善率が8週以降では音声改善を認めなかったため早期の音声治療が必要と報告している3)。このように海外では一側性反回神経麻痺に対する音声治療の効果を統計学的に検討した報告が散見されるが,本邦では少ない。本研図2 音声治療前後のVHI,MPT,MFRの推移(*p<0.05)1) 小川 真:甲状腺術後嗄声の頻度およびリスク因子と音声改善手術の問題点.内分泌甲状腺外会誌33(4):224─227, 2016.2) Busto-Crespo O, Uzcanga-Lacabe M, Abad-Marco A, et al:Longitudinal voice outcomes after voice therapy in unilateral vocal fold paralysis. J Voice 30(6):767.e9─767.e15, 2016.3) Mattoli F, Meinichetti M, Bergamini G, et al:Re-sults of early versus intermediate or delayed voice therapy in patients with unilateral vocal fold paralysis:our experience in 171 patients. J Voice 29:455─458, 2015.127日気食会報,73(2),2022
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