日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション2嚥下障害に対するチーム医療本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。 本パネルディスカッションでは,「嚥下障害に対するチーム医療」というテーマで,4名のエキスパートの先生方にご発表いただいた。耳鼻咽喉科医の立場から,嚥下障害に対する多職種のチーム医療の最新情報,COVID-19患者の嚥下障害の対応などをご報告いただき,食道外科医の立場から食道癌術後の嚥下障害に対するチーム医療についてご講演いただき,それぞれ活発な討論が行われた。 初めに,香取幸夫先生(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)に「嚥下障害に対するチーム医療:急性期病院(医育機関)における活動」というタイトルで,急性期病院(医育機関)の嚥下診療を概説いただいた。年間約600名の嚥下障害の入院患者を中心に,週一回の嚥下カンファレンスにおける症例検討や情報共有,診療科横断的な研究の実施,広報誌やHPの作成,入院患者の嚥下機能スクリーニングの活動をご発表いただいた。今後の重要課題として,長期的なリハビリ介入,老嚥の対応,嚥下障害の予防と機能維持などの嚥下診療を提案された。 続いて,河本勝之先生(淡海医療センター頭頸部甲状腺外科センター・耳鼻咽喉科)には,「当院における多職種介入NST嚥下チームの取り組み─対象拾い上げの工夫とチーム対応─」というタイトルで,ケアミックス型総合病院における嚥下診療についてご紹介いただいた。多職種による早期からのNSTチームと嚥下チームの介入により,早期スクリーニングの対応や治療計画などの取り組みや問題点などをご発表いただいた。 次に佐藤弘先生(埼玉医科大学国際医療センター128消化器外科)には「胸部食道癌術後の嚥下障害に対するチーム医療」というタイトルで,胸部食道癌手術における周術期包括的な早期回復プログラムの一つとしての口腔ケアや,早期嚥下リハビリの現状や問題点をご紹介いただいた。今後,地域の医療機関との連携強化が重要な課題であるとご発表いただいた。 最後に木村百合香先生(東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科,摂食嚥下支援センター)には「COVID-19患者の嚥下障害へのチーム医療─東京都コロナ「重点医療機関」の立場から」というタイトルで,COVID-19パンデミックにおける現状と嚥下障害に対する対応についてご紹介いただいた。東京都の「コロナ重点医療機関」として,多くの病棟がコロナ専用病床に変更され,多数のコロナ感染者を受け入れることとなった現状をご提示いただき,その中でCOVID-19患者の嚥下障害への対応を重点的にご発表いただいた。 各演者の講演は完全Web開催であったが,大変充実した内容で活発な討論も行われ,今回の学会テーマである「新たな時代の気管食道科学」として相応しいパネルディスカッションであったと思われる。最後にこのような素晴らしいパネルディスカッションを企画していただいた会長の杉尾賢二先生(大分大学医学部呼吸器・乳腺外科学講座)に敬意を表するとともに感謝申し上げたく存じます。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。日気食会報,73(2),2022pp.128─138パネルディスカッション2「嚥下障害に対するチーム医療」司会者のまとめ原 浩貴 川崎医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科学加藤広行 桐生厚生総合病院 外科

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