図2 スクリーニング変更前後のVE件数,NST件数2016年度にスクリーニング変更後,VEとNST件数は急増した.技師が採血検査でアルブミン2.4以下となった症例のリストを作成し,いずれもNST本体チームが介入する。 続いて嚥下障害のスクリーニングは看護師が入院患者全例に摂食機能療法初期評価を行う。誤嚥性肺炎もしくは脳血管障害で入院している,経口摂取をしているが嚥下機能低下が疑わしい,嚥下訓練食を提供しているなどに該当する症例は主治医を通さずに看護師の判断で嚥下内視鏡検査(VE; Video-en-doscopic Evaluation of swallowing)評価のため当科NST嚥下外来の受診予約が取られる。なお全身状態不良ですぐVE評価ができない症例は,まずNST本体チームが栄養管理で介入し,評価可能な状態となれば改めて当科受診となる。一般的には看護師が多忙であると評価漏れが懸念されるが,これらの評価表は患者のカルテをあけると記載が完了するまで自動的に出てきて,評価漏れがないようになっている。3.嚥下評価と介入方法の決定,効果 VE評価時は当科医師,言語聴覚士(ST),看護師,栄養士が同席し,その場で情報を共有する。VEの嚥下スコア3)で,0─2点は介入なし。3,4点は病棟看護師が介入して摂食機能療法を行う。5点以上は看護師に加えSTが介入するとともにNST嚥下チームが週1回の病棟回診でフォローする。また3点以上は摂食機能療法の対象とし,事務員が機能療法のコストの管理を行い,問題があれば病棟師長に連絡して対応する。前述の各種入院時スクリー131ニング,VE結果,摂食機能療法の記録はすべてカルテのテンプレートを利用し,業務量の軽減を行っている。 各年度のVE件数を図2に示す。入院時スクリーニングを開始した2016年以降は受診患者数が急増している。そのうちVE 3,4点(主に看護師介入)は26%,VE 5点以上(主にNST嚥下チーム介入)は59%であった。嚥下障害患者の拾い上げという点では多大な効果があったと思われる。 また2016年からの取り組み前後の期間に誤嚥性肺炎疑いで入院した患者のVE実施率と実施までの期間,入院後の絶食期間,在院日数を比較した。VE実施率は26%から53.7%に増加し,VE開始までの期間も13.6日から7.4日と減少した。入院後の絶食期間は4.5日から3.8日に減少し,在院日数は77.1日から56.2日と著明に減少した。入院後の早期スクリーニングと多職種による介入がいずれの項目にも効果があったと思われた。4.外科的治療 リハビリテーションで改善の見込みがない症例には外科的治療4)を行っている。2014年1月から2021年10月の手術は68件で,そのうち嚥下機能改善手術13件,誤嚥防止術が55件であった。嚥下機能改善手術の内訳は経口的輪状咽頭筋切除術(CPM; Cricopharyngeal Myotomy)8件5, 6),喉頭挙上5件7)であった。喉頭挙上術症例は全例,他術式と併用しており,外切開CPM併用2件,外切開CPMと頸椎骨棘切除術併用2件,咽頭弁形成術併日気食会報,73(2),2022
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