日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション2嚥下障害に対するチーム医療本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。埼玉医科大学国際医療センター 1)消化器外科,2)リハビリテーション科1.はじめに 胸部食道癌手術は高度の侵襲を伴うが,周術期早期回復プログラムの有用性が示されている1, 2)。 また,その手術侵襲により嚥下機能にさまざまな影響が及ぶため,特に術後早期には何らかの嚥下障害を生じることが多い3)。嚥下の障害例においては,痰の喀出障害により容易に肺炎をきたす。食道癌の術後在院死亡の原因において,肺炎の頻度は高く4),その克服は,大きな意味をもつ。 ところが現実的には,嚥下障害への対応はあまり重視されていないことが多く,術後の経口摂取開始後に,誤嚥性肺炎を起こして初めて嚥下障害に気づくということを経験する。また,本手術は声帯麻痺図1 術前嚥下スクリーニングフローチャート133も多く,消化管の吻合部自体が高位にあり,高齢患者も多いことから嚥下障害に対するチームアプローチは,非常に重要である。嚥下訓練は,周術期包括的早期回復プログラムの1つの重要なelementとしても考えられる。 当院における嚥下障害に対する介入方法と問題点を報告する。2.外来診療での対応 外来初診時に,地域の歯科医院を紹介し口腔ケアを開始する。食道癌患者は手術だけでなく,化学療法などを併用する集学的治療を行うことが多く,臨床病期にかかわらず歯科介入・口腔ケアは開始している。手術直前には,多職種チームによる周術期外日気食会報,73(2),2022佐藤 弘1),宮脇 豊1),李 世翼1),大矢周一郎1),椙田浩文1),桜本信一1),間野政行2),牧田 茂2)胸部食道癌術後の嚥下障害に対するチーム医療

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